プラモデル塗料の分類として大枠で
ラッカー塗料
アクリル塗料
エナメル塗料
とだいたい3種類の種類、呼び方が一般的にはプラモデル界隈では言われています。
このプラモデル塗料の種類、呼び方については昔からモヤモヤしていて、今でもはっきりと納得できたわけではありません。
理由としてはラッカー塗料、アクリル塗料、エナメル塗料という呼び方が本来の塗料の呼び方と乖離しているからです。
今回はこの塗料の呼び方について掘り下げてみようと思います。
なお今回の記事では、というか毎回そうですが誰かを批判するわけではなく知的好奇心探求のための検証であることをご理解ください。
事の発端はタミヤ ラッカー塗料
今回の疑問のトリガーとなったのがご存じタミヤから発売された新しいラッカー塗料。
このタミヤのいわゆるラッカー塗料が出現するまで、プラモデル界隈で用いる”ラッカー系塗料”で明確にラッカー塗料と銘打った塗料はありませんでした。
なのになぜ”ラッカー系”という呼び方がされていたのかが疑問で、かつあっさりタミヤがラッカー塗料と銘打ってリリースしたこと。
家庭用品品質表示法の観点
消費者庁-塗料
1.品名
塗膜を形成するための主成分の種類に応じ、適切に表示する。
具体的には、乾性油を主成分とする塗料については「油性塗料」、ニトロセルロースを主成分とするものは「ラッカー」、合成樹脂を主成分とするものは「合成樹脂塗料」、セラックを主成分とするものは「酒精塗料」の用語を用いてそれぞれ表示する。
なんでも物を売るには製品名称が必要で、商品の品質について表示方法が定められています。
これが家庭用用品品質表示法で、そのなかの塗料の種類は4種類あって、
油性塗料、ラッカー塗料、合成樹脂塗料、酒精塗料とあります。
家庭用用品品質表示法の観点からいうとラッカー塗料の定義はニトロセルロースを主成分とするものがラッカーと定義されています。
で。たぶんなんですがプラモデル塗料にはニトロセルロースは主成分と称するほど含まれていません。
そして現在プラモデル塗料のタミヤラッカー含めてほとんど全てが「合成樹脂塗料」です。(アクリル、エナメルも)
なのに一般的に(本来の合成樹脂塗料の)ラッカー系塗料と呼ばれるのはなぜか。
というのが今回のテーマです。
タ〇ヤに聞いてみた
この疑問に関しては当事者たるタ〇ヤに聞くのが早いのでタ〇ヤに疑問をぶつけてみました。
結果については私の質問に大変親身にこたえていただき非常に好意の持てる返信をいただきました。
ただし今回は返信の内容全てをそのまま記載するのは難しい大人の事情があるので、ぼんやりとお伝えしたいと思います。
質問の内容
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・家庭用品品質表示法ではニトロセルロースを含有した塗料をラッカー塗料とするとある。
・タ〇ヤカラーにはニトロセルロースの表記が無く含有されていない可能性があり。
・これをラッカー塗料と称するのは家庭用品品質表示法に反すると思う。
・(品名には合成樹脂塗料と記載)ここら辺の見解を教えてほしい。
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ざっと質問の内容はこんな感じでした。
ラッカー系塗料塗料にまつわる部分を中心に問い合わせしてみました。
質問の回答
・品名は合成樹脂塗料で問題ないという認識。
・模型業界では一般的にラッカー塗料、アクリル塗料、エナメル塗料という表現が浸透 していて、これは家庭用品云々とは別に塗料の分類上の呼称ととらえている。
つまりタ〇ヤの回答としては、商品名は通常他の塗料と同じ合成樹脂塗料なので商品の表示は問題ない。
ラッカー塗料としてあるがこれは家庭用用品品質表示法の示すラッカー塗料では無く、古来より伝えられてきたプラモデル業界のラッカー塗料の呼称にならったもの。
商品名がラッカー塗料(プラモデル用)で
品名が合成樹脂塗料という若干いびつな表現になっていることが難しく感じさせる部分です。
タ〇ヤとしてもラッカー、アクリル、エナメルとしたほうがユーザーからもわかりやすいし分類上明確かといったところでしょうか。
各塗料のだいたいの歴史
まあ質問の時点でほぼ答えが出かかっていた内容だったと思うのですが、さすがはタ〇ヤ。
このままでは終わりません。
各塗料の分類の起源的なものを教えていただきました。
これも大人の事情云々で全てをお伝え出来ないのですが軽く載せておこうと思います。
ラッカー塗料編
- ルーツは”ニトロセルロース”という綿から抽出された樹脂。
- 戦後この塗料は乾燥が大変早く模型業界でも大いに製品化された。
- その後俗称化され乾燥の早い塗料を”ラッカー系”と呼ぶようになった。
- 現在では乾燥が早ければラッカー系と呼んでしまう場合がある。
エナメル塗料編
- エナメル系塗料の起源としては塗料の種類というよりは、”艶”を表現した
ものではないかと考えられる。”エナメルの靴”のような。 - 系統的には脂肪族炭化水素系(灯油のようなもの)
- この系統の塗料を総称して、エナメル塗料と呼んでいたのが始まりかと思われる。
- 海外に多く存在していた。(パクトラ、ハンブロール、テスター等)
- 伸び良くムラができ難く繊細で金属的な色の輝き感に優れている。
- 反面乾燥時間が長く、乾燥後の塗膜は柔らかく研磨には適さない。
- タ〇ヤがこの系統を最初に採用(パクトラ社製)した理由の一つは、
筆塗り時の性能が良くアメリカでの実績に基づいたもの。 - 当時の日本では(50年以上前)プラモデルに彩色する事は余程の事で現在とは状況が全く違い筆塗りが一般的だった。
- タ〇ヤは筆塗り性能に優れて美しく仕上がるこの系統を選択したが、グ〇ゼ産業(現ク〇オス)は乾燥の早いラッカー系を最初に導入し現在に至る。
アクリル塗料編
- 一般的な模型用塗料に使用されている樹脂の多くはアクリル樹脂となっている。
- 前述のエナメル塗料もアクリル系の樹脂を使用。
- 今では一般的に使用されている”アクリル樹脂”だが、タ〇ヤが最初に製品化した 1981年には、まだまだ未知なるものだった。
- 水溶性の塗料の商標名を”アクリル塗料”とした。
- 塗料の系統としては水溶性アクリル樹脂塗料
- 特長としては筆ムラが割とでき難く比較的早く乾燥する。
- 他の溶剤系の塗料よりは安全性が高いと考えている。
まあざっとこんな感じで説明をいただきました。
それぞれの成り立ちが俗称から成り立っているので、家庭用用品云々に当てはめると齟齬が生じるのも否めないといった印象でしょうか。
だいたいはっきりしたところで、いままでどおりラッカー、アクリル、エナメルで行こうと思います。